相続ニュース相続ニュース

遺言執行者とは?

遺言・生前対策

遺言の中で、「遺言執行者」を指定することがあります。遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する(民1012)とされていて、遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない(民1013)ことになっています。

では、遺言で遺言執行者が指定されている場合、相続人は相続手続きは一切できないのかというと、実はそうではありません。遺言執行者の職務は「遺言の執行」なので、「遺言の執行」を要しない事柄については相続人が手続きしても構わないことになります。

遺言の執行が必要な行為は、次のようなものです。
(1)遺贈
(2)認知
(3)推定相続人の廃除

一方、次の行為は、執行が不要とされています。
(4)「相続させる」旨の遺言に基づく相続

遺言で遺言執行者が指定されていて、相続財産の中に不動産があるとします。
その不動産を、相続人ではないAに「遺贈する」という遺言の場合、遺言執行者とAとが共同で登記手続きを行い、相続人は関与できません。
相続人の1人であるBに遺贈するという遺言の場合も同じで、遺言執行者とBとが共同で登記手続きを行い、B以外の相続人は関与できません。
しかし、相続人の1人であるCに「相続させる」という遺言の場合は、Cが単独で登記手続きを行うことができ、逆に遺言執行者は関与できません。

「特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言があった場合は (中略) 何らの行為を要せずして、被相続人死亡の時に、直ちにその遺産はその相続人に相続により承継される」という判例があり、「相続させる」という遺言の場合は、遺言執行の余地がないとされているからです。

預貯金についても
「甲銀行の普通預金については、Dに相続させる」
という遺言があった場合は、遺言執行者の関与なしに、Dが単独で名義変更や解約の手続をしてよいことになります。

相続人以外に遺産を残したい場合は、(1)の遺贈による必要がありますから、確実な遺言執行のためにも遺言執行者の指定はしておいた方がいいでしょう。ただ、実際の遺言では、(4)のパターンで書かれることが多く、遺言執行者が指定されていても現実に遺言執行者による執行を要するケースは少ないと言えます。

とは言っても、預貯金の解約手続きなどは、(4)のパターンの遺言でも、遺言執行者による手続きに応じてくれる銀行が多いのも事実です。この場合は、法律的には遺言の執行ではなく、相続人から遺産整理の委任を受けるという解釈が適当かと考えますが、銀行はあまりそのあたりの細かいことは理解していないようです。遺産整理業務については、次回のコラムで書こうと思います。

法律的に遺言の執行が不要な場合でも、遺言執行者に司法書士などの法律専門職を指定しておけば、さまざまな相続手続きがスムーズに進むことは間違いありません。遺言を作成する際には、信頼できる人を遺言執行者に指定することをお勧めします。


札幌駅前相続サポートセンター

TEL0120-973-813

営業時間 / 9:00~18:00(平日)

札幌市中央区南1条西4丁目5番地1大手町ビル8階